ちょうど10年前に「あなたのような家庭環境の人と一緒になるために私は頑張ってきたわけじゃない。だからあなたとは一緒に居られない。」と言われたことがあった。
僕はそのころ、身分不相応な高層の部屋を借りていたのだが、そこに投げられた爆弾はなにもかも吹き飛ばし、無数に割れて飛び散ったガラス片が身体中に突き刺さった。37歳になった今もそのすべてを取り除くことはできていない。もともと地下に住んでいた人間がなんの思慮もなく高い階段を登ってしまうと、そういう目に遭うことをその時に知った。
「明けない夜は無い」という言葉を聞く。「マクベス」に出てくるそうである。17世紀の当時、南極などには誰も到達していなかったから、地球に夜が明けない日もあることを人びとは知らなかったろう。そんな局地で雑草は生きることができない。
年末のM-1グランプリで、バッテリィズのエースが「生きるのに意味なんて要らんねん」と叫んでネタを締める場面があった。バカネタのはずなのに妙に哲学的な最後で、途中で言及されていたソクラテスもきっとテレビの前で唸ったに違いない。1年前の「36歳でになって」で生きる意味を考えていた僕にとって、そんなもの必要ないという境地に至るには、まだまだ時間がかかりそうな気がしている。